あなたは対局中、誰と戦っているのか。目の前の相手に決まっているだろう。本当にそうでしょうか。

あなたが3級だとして、3級の相手と指しているとする。まあいい勝負でしょう。次に初段の人と指すとしたら。なかなか厳しい手が返ってきます。このとき、あなたが指した手に違いはあったか。どちらもあなたなりの読みで指し手を進めたはずです。

つまりあなたはあなたと指している。あなた自身と戦っているのです。あなたの予測より優れた手を指されるから、あなたは負ける。予測より劣った手が続けば、あなたが勝つ。たとえ羽生さんと対局するとしても、あなたが「あなたの読み筋としての相手(=あなた自身)」と戦うことに変わりはないのです。

その羽生さんは、終局後「どの辺りで勝ちを意識されましたか」と問われると、「最後の詰みが見えたとき」などと、最終盤まで難しかったと答えることが多い。強い人ほど楽観しない。疑い深い。きっと頭の中で「羽生対羽生」が戦っているからでしょう。


自分より少し強い人と指す。上達法の一つとしてしばしば耳にします。手筋や大局観が身につく。何とか負かしたいと向上心に火がつく。

将棋には感想戦という美しいしきたりがあります。(指導対局に代表されるように)今指した将棋を振り返り、強い人の読み筋や、局面や急所のとらえ方を知る。相手の発想や思考を「言葉として」聞くことで、より深い理解が得られるでしょう。

首尾よく一番入れば、やる気も一層湧いてくる。やはり勝つ喜び(成功体験)が自信となり、次のモチベーションへとつながります。毎度毎度コテンパンに負かされてばかりでは、心が折れてしまいますからね。

強い人に途中まで互角で指してもらい、最後に勝たせてもらえれば理想的。それって、当レッスンのメソドそのものなんですけど(笑)。この役目もやがてはAIに取って代わられてしまうのかな。


子供の上達が早いのは。頭が柔らかいから? 実戦をバンバン指すから? どちらも一理あるでしょう。私は「将棋の本を読むから」と思っています。自分の子供の頃がそうでした。最初に読んだのは、原田泰夫九段の『将棋を始める人のために』。同姓に親しみを覚えました。小学生が読めない漢字もたくさんあったでしょうに(笑)。

アマチュア時代、一人本を読んで勉強したことで知られる藤井猛九段。(棋書に限らず)本を読むことの効用についても言及されています。いわく、

「将棋の読みは言葉です。手を読むのは頭の中で駒がUFOみたいに飛ぶわけじゃなくて、言葉で考えているんですよ。だから言葉が重要になる。僕の場合は読書したあとは手がよく読める。将棋と読書は脳の使う場所が似ているんでしょう」(『イメージと読みの将棋観2』(鈴木宏彦著))

「読みは言葉」。ここに上達の大きなヒントが隠されているようです。考察を次回以降も。


本格始動の年。まあ、焦らず、慌てず、諦めずの3Aでやっていきます。第一義はレッスンの創意工夫。「ワン・トゥ・ワン メソド」なるものの確立でしょうか。上達の善循環を作り出す。「楽しい!」の連鎖が不可欠です。

「PDCAサイクル」(Plan−Do−Check−Action。マネジメントのコツ)に倣い、「WDTMサイクル(造語)」を回していくのはどうか。すなわち「わかった−できた−楽しい!−もっと(知りたい)」のスパイラルです。そのためにも、コミュニケーション能力や観察力、洞察力を高めなくてはなりません。

レッスンにおける「言語化」を磨き、セオリーやハウツーに仕立てる。受講者の小さな変化(進歩)に気づき、学びの実感を通じて、モチベーションの向上につなげる。まずは髪型を、服装を、ネイルをほめることからでしょうか(笑)。


このコラムは2カ月に1本のペースで連載します(予定は未定)。硬軟入り交じると思いますが、よろしくお付き合いください。それでは恭しく初手をば。

この教室のアイデアが浮かんだのは今年の3月頃。レッスンプランを練る傍ら、教室のコンセプトを掘り下げ、ウェブサイト作りへとつなげました。いわゆる「藤井聡太フィーバー」はその後なので、便乗したつもりはありません。(おこぼれにあずかりたい気持ちは山々ですが(笑))

私はコンサルタントの端くれですが、物事には、

|里辰討い
△任る
人に教えられる

の三つのレベルがあり、「,筬◆廚函岫」とでは大きな違いがあるようです。

人に教えるためには、知識やスキルを情報として伝えるだけでは十分とは言えず、相手の個性や長所をとらえ、その特性を活かす、伸ばすなどのテクニックも求められるでしょう。

「教えることは二度学ぶこと」は至言ですね。私自身もっと精進しなくてはなりません。このレッスンを通じて得た気づきや学びも、本欄に記録として残していきたいと思います。

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